今まで傍でこのやり取りを聞いていた多々良さんがやっと口をひらいた。
「イト、もうエエし帰り 帰ってはよう寝や」
「アキももう怒らんとき・・・・イトがこない言い出したらしゃーないやろ」
多々良さんは私以上にイトとの付き合いが長い人である。
「かげさん、あかんわ イトがこー言い出したらきかへんわ」
こー言って私に苦笑いを浮かべた。
「なぁそやろ、かげさんより多々良さんの方がよっぽど話がわかるわ」
イトは腕白小僧が勝ち誇ったような顔をして私の方に笑顔を見せた。
『調子のるな!多々良さんにちゃんと断りとお礼を言わんか!』
私も呆れてしまいこれ以上何も言う気にはなれなかった。
「はい」
「多々良さん ごめんなさい。」
「この穴埋めはちゃんとさせてもらいますし今日はこれで失礼させて頂きます。」
深々と頭を下げたイトの足元はふらついてた。
巽橋の欄干に片手を置いて身体を支えるので精一杯である。
「わかったからはよ帰って寝や 穴埋めはアフターはやめて同伴がええ。」
「同伴やったら眠たいって言わんやろ・・・・」
多々良さんのこの一言で場が和み今まで怒り顔だったアキの顔にも笑顔が戻っていた。
『多々良さん、これから「リバー」に行きますけどご一緒にどうですか?』
「いいですか?ほな、ご一緒させて頂きますわ」
『アキも気分直しに一緒に来い』
「は~~~ぃ♪」
アキからは今まで怒っていたのが嘘のような軽いのりの返事が返ってきた。
通りかかったMKのタクシーにイトを押し込んだ。
窓をいっぱいに明けてイトが笑いながら手を振ってきた。