ふと時計を見ると既に10時を回っていた。
「チェックを・・・」
マネージャーに言いながら『扇』のカエデママに電話を入れた。
「カエデか、暇か?暇だったら今『ルパン』に居るから迎えに来てくれ」
私の場合は必ずママか店の子が迎えに来てくれる事になってる。
一人で祇園を歩かせるとすぐに知らない店へと飛び込んでしまう癖があるらしい・・・
だから必ず迎えに行くので呼んで下さいと約束をさせられてしまうしまつだ
一度、イトのところの大林君から
「かげさん、今まで行って二度と行ってない店を全部教えてください
私が回ってボトルを回収してきます」
と真顔で言われてしまったことがある。
数分もしないうちにカエデが迎えに来てくれた。
私の横に座り水割りを一口飲んで『ルパン』をあとにした。
カエデの店『扇』は花見新橋を辰巳神社の方に入り白川沿いにある。
この『扇』にはイトのところの女の子の実のお姉さんがいる関係で行くようになった。
外見はこじんまりとした京町家だが中に入ると
そこそこの広さがあり店内には螺旋階段があり2階にも席がある
私の指定席はその2階のコーナーで他の客からは死角となっている。