これからお話しするのは私と私が妹の様に可愛がってる
祇園のクラブのママ「イト」との私的なお話です。
勿論、登場人物は仮名で多少の脚色も含まれています。
また、色恋など艶っぽい話でもなく退屈な物語です。
祇園にイトと言う女がいた。
当時は三十代前半でほっそりとした、美しい黒髪が背中の中程まである女。
その小顔は猫のように・・・そう、鶴田一郎氏の描く女性に良く似ている。
私がイトと出合ってどれほどの時が過ぎたのだろうか・・・・
イトは女の子を幾人も抱えるクラブのママ。
若いママにありがちな雇われママでは無く独力でクラブを開いた頑張り屋の女である。
だが、かなりの天然で我侭でもある。
お店でも眠くると黙って消えしまい家に戻ってしまう。
例え大切な客がいてもお構い無しだ。
いつもマネージャーの大林君を困らせる所業だ。
だが、その憎めない性格から多くの客の支持を受けているのも確かである。