2012年4月21日土曜日

「イト常連を放置する」・・・・・⑤


多々良さんに軽く会釈をすませ二人を見た。

「あっ!かげさん、ちょうどよかったわ。ママが自分のお客さんをほっといて帰るって言い出しはったやんや!」

「せっかく多々良さんがアフターにさそってくれはって『彩』でご飯よばれてこれから『ルージュ』に行って軽く飲もうかって言ってくれてはるのに・・・」

アキはかなり興奮をし堰を切ったように一気にまくしたてた。

「イト眠いさかい帰るしってなんでやねん!うちのお客さんならまだ判るけど自分の古くからのお馴染みさんやのに勝手もほどがあるわ!」

「うちかて○※▲×■◇♯※●△・・・・・」

もう興奮しすぎてアキの言葉は後半は何を言っているのかわからない。

だが、事情は理解できた。

また、イトの悪い癖が出たようだ。

『わかったさかい、少し落ち着かんかい』

一方、イトはと言えばバツが悪そうにうつむいたままである。

『イト!どーゆぅ事や』

「そやかて・・・ほんまにイト眠とうなったやし」

イトは巽橋から川の流れを覗き込むようにしながらボッソっと呟いた。

「かげさんも知ってるやん、イトが眠とうなったらどないもこないも辛抱でけへんのを」

今度は私の方に顔を向けて話し出した。

『でもな、せっかく多々良さんがアフターにさそってくれはったのに失礼やろ』

「ほなら、眠たいん我慢して一緒に行って眠そうな顔しててアクビしたりしててもエエん?そっちの方が失礼とちゃうん?」

「多々良さんかてぎょうさんお金を使いはるのに一緒に行った相手がそんなんやったらおもしろないんとちゃうん?」

「そんなことしたらかえって多々良さんに失礼やし迷惑になるんとちゃうん?」

確かにイトの言い分にも一理はある・・・・・負けそうである。

「そやさかい、イトは帰るしアキにあとは失礼のないようにあんじょう頼むでって思いで言ってたんやし」

それを聞いたアキがイトの話が終わるか終らないうちに口をひらいた。
「ちゃうやん!ママがゆぅたんはイト眠とうなったし帰るわ しかゆぅてへんやん!」

「ゆぅおう思おたらあんたがえらい剣幕で怒りだしたやんか、そなゆぅ暇もあらへんわ」

イトは一旦言い出すと人の話を聞かない頑固さもあり、もうこれ以上はどうしようない状況である。